2017年05月 / 04月≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫06月

2011.09.18 (Sun)

アニメの文法の話(3)

Monster (1) (ビッグコミックス)Monster (1) (ビッグコミックス)
(1995/06)
浦沢 直樹

商品詳細を見る

具体的に、どう原作を演出的に扱っていったかという話は、
とてもとても長くなってしまいますので、またいつか機会があれば…。

原作の当該話数の魅力を、映像表現として伝える上で、
当時の僕が、
演出的にもっとも効果的であると信じる方法を積み重ねていった結果、ただ、自然とそうなりました。

映像の演出とは、極論すれば「流れ」をコントロールする仕事であると言えます。
流れとは、小さいものからビート、リズム、抑揚、緩急、構成、などに分類できると考えています。

いきなりこんな持論を、結論から言ってもあれですが…(汗)、
とりあえず今は、僕がそう考えているということで。

ふつうに観賞する上では、一時停止したり巻き戻したりしないという意味だけでも、
映像は、音楽にもっとも良く似ています。

ページを開いた時に、すべてのコマが眼に入ってくるマンガでは、
その見開き2ページごとに、一つのハーモニーを構成する必要があります。
しかし映像はそうではない。

映像の中で1秒の時間は、見る人にとっても1秒であり、
映像は、マンガよりもずっと音楽に近いと言えます。

そうしたメディアの違いを超えて、原作がもっている流れの魅力――。

ひとことで言えば、僕の演出話数は、
その原作の「流れ」の再現度が高いのだと自負しています。
少なくともそれを目指して仕事しています。


ただ一点、
MONSTER で、原作のコマをあえて使ったのは、
原作で、グリマーさんが怒りを爆発させる当該カットは、見開き2ページを全面に使った、大ゴマだったということ。
そして原作じたいも、まさにその大ゴマに向かって、マンガ的に完璧に演出されていたということ。

以上の結果、
この話数をマンガで読んだ人のすべてに、
グリマーさんが大ゴマで絶叫するマンガの絵は、深く深く、確実に印象に残ったはずです。
それを再現するには、この絵しかありえなかったし、
映像の演出の必然もまた、そこに向かうべきでした。

だからここだけは、
このコマに向かう逆算で、カットを構成しているのです。

途中でそう決めたのではなく、
コンテの1カット目を描く時から、それは決めてからでなければ、描き出せない部分であり、
だからこそ、かえって大変な、演出が智恵を絞らなければならない箇所だったと言えます。

ゴールは一緒でも、映像とマンガでは演出の手法が違うので、
実際に僕は、ミニマムな単位ではその直前にスローモーションのカットバックを配するなど、その後のグリマーさんの「怒り」の時間を際立たせる為の布石をし、
テレビのフレームはマンガのように大きくなったりしないので、当該カットもPANしながら3回(4回だっけ?)寄ったりしています。

それ以上に、そこまでの映像のすべてが、ただその一点に集約していくように、演出的に計算していくのが、
大変に骨の折れる、仕事になるのです。
だからマンガ原作のコンテは大変なんですね…。

前回の稿で、
もう2箇所、原作に近いコマを使ったかもしれないと書いたのは、
それらも、グリマーさんの怒りほどでなくても、原作の絵が強烈に残るシーンだったので、
逆算して生かしたような気がしたのです。

ただラストカットに関しては、
カメラの高さだけは確実に下げた、というような記憶があります。


もういっぺん稿をあらためます。
長いなあ……そうなる気がしたんだけど(汗)
02:43  |  演出の話  |  EDIT  |  Top↑

2011.09.18 (Sun)

アニメの文法の話(2)

今さらになりましたが、ようやく続けます――。

マンガ原作を、映像化する話。
なかなか更新しなくてすみません。

ふと思い立って書いた内容だったのですが、
この話題の続きがリクエストが多くて、僕としては意外でした。
需要があるならば、書きたいと思います。


昔の仕事なので、記憶が不確かな面もありますが…、
(あとで気付いたら訂正記事つけますね)

僕の仕事だと、
DEATH NOTE 17話「執行」(2007年OA)を例にとると、
原作の絵面をそのまま生かしたカットは、0カットです。

MONSTER 71話「超人シュタイナーの怒り」(2005年OA)だと、
グリマーさんが怒りを爆発させる一連のカットが、原作の絵面になります。
一連と言いましたが、マンガでは1コマの同ポジを、
PANを繰り返しながら、ぐいぐい寄ってくだけなので、
実質1カットと言えます。

この話数は、ほぼ原作のアングルを含めると、
もう2カットあったかもしれませんが…、
(グリマーさんが死ぬラストカットと、ルンゲ警部の「すまなかった」も、カメラの高さを少し変えて使ったかもしれません)
はっきりと自分の記憶にあるのは、ここだけですね。

手前味噌ですが――、
この両話数とも、原作を既読で見た方の多くに、
「まさに原作の通りだ!」という感想を、持って頂けたのではないかと思っています。
実際、MONSTER の当該話数は、
原作者の浦沢先生自身に、打上げのご挨拶で、「アニメでもっとも印象に残った話数」と紹介して頂いたほどでした。

僕の演出意図も、既読者に、まさにそう感じてもらうことにありました。
なのに、原作のコマの再現度が1%にも満たないというのは、多くの方にとって意外だと思います。

僕の演出では、
マンガを読んだ読者が感じたように、あるいは、感じたよう…をさらに映像的に掘り下げていく為には、
原作に忠実であるよりも、誠実であることが重要になります。

つまり…、
わざわざ原作の絵を避けていったのではまったくなくて、
演出的に原作を追及していった結果、そうなったのです。

そしてそれは、原作がすぐれているからこそ、そうなったのです。


もう一度、稿を改めます。
今度はすぐにこのまま書きますよ(笑)
01:51  |  演出の話  |  EDIT  |  Top↑

2011.07.06 (Wed)

アニメの文法の話(1)

今日は雑談です。
僕自身は最近は機会がないのですが、
マンガ原作をアニメ化する機会は、ひと頃よりも減ったとはいえ、まだまだ多いだろうと思います。

いろいろな意見があると思いますが…、
僕にとっては、マンガ原作のコンテは、
小説原作であったり、オリジナルであったりよりも、ハードルの高いものです。

それはなぜかと言いますと…、
完成度の高いマンガ原作ほど、一見、
マンガのコマを順番に並べれば、それですむように思われるかもしれませんが、
実はこれが罠で、まったくうまくいかないコンテの典型なのです。

実は、完成度の高いマンガ原作であればあるほど、
そこには明確な、そのマンガならではの文法が存在していて、
それが、映像の文法の設計図たる、コンテ作業の前に立ちはだかるのです。

大好きなマンガ原作の、原作のコマにそっくりな絵づらが続くのに、
どうしてか、マンガとアニメが違って感じられる…、マンガの読後感とアニメの視聴感が近しくならない――ということがよくあります。
それは大概――、
マンガならではの文法を、アニメに置き換えそこなっているか、
そのアニメが独自の文法を持っているのに、なまじマンガの完成度が高すぎる為に、
マンガの文法が、まるでノイズのように、コンテ作業にに介入してしまうからです。

たとえば…、ほんの一例ですが、
マンガでよくある構図として、多人数を俯瞰でとらえた引きサイズの構図がありますね。
これは、マンガではまったく問題ありませんが、アニメではたいがい良くない構図です。

なぜかと言いますと、
アニメでは、同時に一つの画面しか映し出されない為、
そうした構図をとると、いったいそのシーンが誰の視点なのかわからなくなる。
神の視点になってしまい、結果的に、非常に客観的な説明の印象を与える。
ところが、次のカットではまた、キャラクターのアップに切り替わり、
見ている側からは視点の移動の根拠がわからず、
映像が、見ている側の感情をどのようにコントロールしたいのか、理解できずついていけない――ということになります。

それがなぜ、マンガでは問題ないかといえば、
マンガはむしろ、同時にいくつものコマが眼に入るのを前提にしたメディアだということです。
だから、そのようにページもレイアウトされている。
コマが大きくなったり小さくなったり、同時に目に入るものにはメリハリをつけるべきであり、逆にコマの間を絵がぶち抜くこともある。

俯瞰の引きショットで状況を説明しつつ、キャラクターの感情をクローズアップで同時に拾うことは、
アニメで無理やり実行しようとすれば画面分割になるのでしょうが、マンガでは全然ありえます。
いやむしろ、それは普通の構成です。

同ポジの切り返しばかりが同一ページにあるような構成があれば、マンガではむしろ異様であり、特殊な演出意図をねらったものになるでしょう。
さまざまな視点・アングルを同一ページに混在させることで、マンガでは一つの状況を立ち上げ、時間軸を確立しているのです。
ところがアニメではそうはいかない。

そうした、マンガの文法に対して――、
それを読んだ読者の読後感に近しい感覚を、アニメを見ることで提供する為には、アニメはどのような文法をとれば良いのか――、
演出家は智恵を絞ることになります。

この項、もう少し続けます。
01:52  |  演出の話  |  EDIT  |  Top↑
PREV  | BLOGTOP |